一、環境アセスメント制度の実施概況
1973年の第1回全国環境保護会議以降、環境アセスメントという概念がわが国に導入され始め、関係部門は環境質に関する調査と評価に関する活動を開始した。1979年9月、全国人民代表大会で採択された『中華人民共和国環境保護法(試行)』によって、環境アセスメントと建設プロジェクトの「三同時[1] 」が法律制度として確立された。1989年に採択された『中華人民共和国環境保護法』では、建設プロジェクトに対する環境アセスメント制度が再度是認された。長年にわたる実践を通じて、建設プロジェクトの環境アセスメントは徐々にわが国における環境保全の基本制度となり、建設プロジェクトによる環境汚染や生態破壊の予防・防止に、重要な役割を果たしている。
1.法体系の構築
1981年、関連法律の規定に基づき、国務院の四つの部・委員会[2]が『基本建設プロジェクト環境保護(保全)管理弁法[3]』を共同で公布し、環境アセスメントを国家の基本建設プロジェクトの一環とみなし、環境アセスメントの具体な実施プロセスを比較的詳細に規定した。1986年、国務院の三つの部・委員会が『建設プロジェクト環境保護(保全)管理弁法』を共同で公布し、建設プロジェクトの環境マネジメントの範囲を基本建設プロジェクトから技術改造プロジェクトおよび地域開発建設プロジェクトまで拡大した。これ以降、国務院の関係部門は建設プロジェクトの立案ルートの増加、外資系企業の増加、郷鎮企業の著しい発展、第3次産業の勃興など、新たな発展情勢に焦点を合わせ、相応の「通知」、「弁法」を次々と公布、建設プロジェクトの環境アセスメントもこれらの分野まで広がった。1998年、国務院は『建設プロジェクト環境保護(保全)管理条例』を発布するとともに、流域開発、開発区の建設、都市における新興地の構築および旧市街地の改造など地域開発計画に対する環境アセスメントに関する条件を示した。
2.技術サポート体系の形成
建設プロジェクトをめぐる環境保全に関する法体系の確立に伴い、環境アセスメントの技術サポート体系も絶えず発展してきた。国務院の関係部門は『環境アセスメントの技術的指導規則』、『業界建設プロジェクト環境アセスメント規範』などを公布するとともに、環境アセスメントを通じて、先進的な環境保全思想、効果的な環境保全措置および技術を生産の実践の中に導入し、徹底を図った。これと同時に、環境アセスメント技術に関する研修を受講し、資格を取得した人員は9,000人余りに上り、全国各地の環境保全関連の研究所、企業、高等教育機関で業務に就いており、比較的厚みのある技術力が形成されるに至っている。
3.環境アセスメントの基本原則の形成
実践による探求を経て、以下のような環境アセスメントの基本原則が徐々に形成された。
(1)建設プロジェクトが国家と業界の産業政策に合致していること。
(2)建設プロジェクトの場所選定が地域全体の長期計画と環境区画の要求に合致していること。
(3)建設プロジェクトについて、エネルギーおよび物資の消耗が少なく、廃棄物がゼロ又は少ない工程を採用し、「クリーナープロダクション」を実行すること。
(4)建設プロジェクトによる汚染物の排出について、国家または地方が定める排出基準を達成すること。
(5)建設プロジェクトが汚染物の排出総量規制に関する指標に合致していること。排出総量を増やさないこと。
(6)改造・拡張プロジェクトは「新を以って旧を導く」などの措置を講じ、生産量を増やしても、汚染は増やしてはならない。
4.環境アセスメント実施率の向上
80年代初頭以降、建設プロジェクトの環境アセスメント実施率は徐々に上昇していった。「第8次5ヵ年計画」期間において、全国の環境アセスメント実施率は1992年の61%から1995年には81%まで上昇、「第9次5ヵ年計画」期間中は90%前後に落ち着いた。
二、環境アセスメント制度の実施効果
1.合理的な産業配置と企業による場所選定の最適化の促進
合理的な産業配置と企業による場所選定の最適化は、地域的な環境汚染と長年の蓄積によって形成される環境汚染の防止に決定的な意義を持つ。環境アセスメントはこの方面において重要な役割を果たした。「第6次5ヵ年計画」期間中、全国で完了した中・大型建設プロジェクト445件の環境アセスメントのうち、4件の場所選定案が却下された。「第7次5ヵ年計画」期間中、全国で完了した中・大型建設プロジェクト2,592件の環境アセスメントのうち84件について、環境アセスメントを通じて、プロジェクトの場所選定の最適化が図られた。現在、建設プロジェクトの場所選定、ライン選定を行う際、それによる環境への負の影響を避けなければならないという点が既に人々の共通認識となっている。また、多くのプロジェクトにおいて、論証の際に様々な方案の比較が行われ、環境マネジメントスタッフや専門家に場所選定の論証への参加を依頼するなどの措置が採られている。
2.新たな汚染源の抑制、既存汚染源に対する整備の促進
改革開放以降の20年間、わが国の経済発展は4倍増を達成し、多くの重大な事業が行われた。一方で、それに伴う環境悪化は見られず、汚染が同時に増加するといった現象は生じなかった。これは、建設プロジェクトの環境アセスメントと「三同時」制度の実施によるところが大きい。90年代に入ってから、わが国では伝統的な業種において、生産工程・技術および製品のリニューアル、モデルチェンジ、改造・拡張プロジェクトが数多く実施され、環境アセスメントについては、「新を以って旧を導く」という戦略が適時実行され、既存汚染源に対する整備が促進された。例えば、1999年の統計によると、全国で生産が始まったプロジェクトの件数は2万2,522件、総投資は4,290億元に上り、うち環境保全に関する投資額は192億に達し、全体の4.2%を占めた。プロジェクトによって新たに発生する化学的酸素要求量(COD)46万2,800tのうち、環境保全施設によって38万5,800tが削減されたほか、「新を以って旧を導く」措置を通じて、既存汚染源の排出量8万3,600tが削減され、「生産の増加、汚染の減少」という目標を実現した。
3.産業技術改造とクリーナープロダクションの促進
建設プロジェクトの環境アセスメントは、企業が採用する技術レベルの起点を高め、エネルギーと物資の消耗および汚染物排出量が少ないクリーナープロダクションの工程と技術を推進する上で、重要な役割を果たした。例えば、中国石油化工集団傘下の大型企業は「第8次5ヵ年計画」期間中、生産額が33%増加した。一方、主に先進的、かつクリーンな生産工程の採用によって、生産額1万元当たりのCOD排出量は57%減り、CODの排出総量は8%減少した。
4.生活環境と生態環境の保護
郷鎮企業と商業サービス企業の数は多く、その波及範囲も広く、往々にして人口密集地に分布しており、都市部・農村部住民の生活環境と生態環境に大きな影響を及ぼす。過去10年間、環境保全部門はこのような企業を環境アセスメントの適用範囲に適時組み入れてきた。これと同時に、農業、林業、水産業、道路、鉄道および鉱山開発などのプロジェクトについて、生態環境への影響に関する評価を強化し、生活環境と生態環境の保護を促進してきた。
三、環境アセスメント制度に存在する問題
1.環境アセスメント制度の適用範囲が狭い
目下、わが国の環境アセスメントは建設プロジェクトに限定されており、環境に重大な影響を及ぼす政策、長期計画、短期計画は環境アセスメントの範囲に組み入れられていない。建設プロジェクトにおける環境アセスメントの審査の中で、「(長期)計画に合致していること」という原則が規定されたが、計画自体に対しては、環境への影響に関する論証は行われてこなかった。現在、主な工業基地の5ヵ年計画に対して、一部環境アセスメントが行われており、冶金、石油・天然ガス、石炭業の関連部門が発展計画を制定する際には、環境アセスメントを実施するよう定められている。但し、その範囲には限りがある。実際の状況を見ると、環境に対して、重大な、時には全面的な影響を及ぼすものは往々にして、政府が制定・実施する関連産業の発展、地域開発、資源開発など各方面の政策と計画である。
2.環境アセスメントの審査、認可メカニズムが健全さに欠ける
目下のところ、いくつかの国際援助プロジェクトを除き、わが国の環境アセスメント情報は公開されておらず、基本的に公衆の参加はなく、独立した専門家による審査制度も欠如している。一般的に言うと、開発・建設活動は往々にして周辺の大衆の利益に直接関わる、或いは影響を及ぼすものであり、周辺の大衆の意見を募り、事前に利益の調整を図り、矛盾の解決を図る必要がある。同時に、環境影響報告は技術性の強い報告であり、専門家の独立した審査が必要であり、独立した大衆の意見と専門家による審査が形成されて然るべきものであり、かつ、これら意見と審査は関連政策を決定する際の重要な根拠となるべきである。
3.環境への影響に対する管理・監督の立ち遅れ
環境アセスメントは、調査研究の展開、環境影響報告の作成、環境影響報告の審査・認可から、関連環境保全措置の実施、追跡評価、事後評価、関連フォローアップ・監督・管理からなる一つの完全なプロセスであり、このプロジェクトによる管理を実現して初めて、環境アセスメントの役割を真の意味で発揮することができる。しかし、現行の環境アセスメントの関連法規は、環境影響報告の作成と審査に偏っており、その後部分については明確な規定がなく、環境影響報告で提起された環境保全措置が確実に実施されているか否かについて、効果的な監督・管理手段に欠ける。
4.環境アセスメント技術の不完全さ、生態系アセスメント能力の不足
健康影響評価、環境・経済・技術の分析、累積的な影響に対する評価などの分野において、建設プロジェクトの環境アセスメント業務の基盤が弱い。また、建設プロジェクトの環境アセスメントにおいても、一貫して汚染抑制が中心に置かれており、生態系に対するアセスメントの技術力は弱く、生態系アセスメントに関する技術も比較的低レベルである。
(全国人民代表大会環境・資源保護委員会法案室)
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[1] 投資プロジェクトの実施と同時に、環境汚染防止施設を計画、建設、操業することを指す。つまり生産施設の計画、建設、操業の三段階において、環境保全施設が同時に計画、建設、操業されること――訳注
[2] 日本の省庁に当たる――訳注
[3] 規則、方法の意。訳文では以下、弁法とする――訳注
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